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初参加者は何を感じたか - RubyKaigi 2024 レポート

2024-06-14

RubyKaigi 2024 に初参加したエンジニアからのレポートです

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こんにちは!ギフティでエンジニアをしている I-NO です。

今回は RubyKaigi 初参加者として、スポンサーという立場での参加レポートとは別に個人の感想をお伝えします!来年以降に初めて参加するか迷っているような方には、このレポートを通じて RubyKaigi の実際の雰囲気を感じてもらえたら幸いです。また、何度か参加されている方は、このレポートを通じてご自身の初参加を振り返る機会にして頂ければと思います。

(スポンサーという立場での参加レポートは、中屋さんが RubyKaigi 2024 参加レポート! として記事を書いてくださっているのでそちらも是非お読みください!)

筆者の概要

  • エンジニア歴は満6年
  • Ruby 歴はだいたい5年

    • ただし、Ruby だけをガッツリというわけではなく Vue や Flutter を並行して開発
  • 主に Ruby on Rails で Web サービスを開発

RubyKaigi の印象

人が多い!!!規模が大きい!!!

なによりもまず、これです。 他のカンファレンスと比べてとにかく規模が大きいです。世界的なカンファレンスになるとここまで規模が大きくなるのかと感動すら覚えました。国内外から高い旅費と参加費を支払い、1つの技術のためにこれだけの人が集まっているという事実に震えました。私はカンファレンスが始まってすぐに、この規模のカンファレンスに参加することだけでも価値があるな、と思ったほどです。

world map

メインホールの大きさにもビビりました…

みんなめっちゃ Ruby 好きじゃん!!

次にこれ。とにかくみんな Ruby が好きなんだなーと感じる場面が沢山ありました。 Ruby のカンファレンスなので当然のことと言われればそうなんですが、企業ブースでも Ruby の話をしたり、セッションの内容は言わずもがなです。

私は日頃から Ruby に触れているのでそれなりに関心はある方だと思っていたのですが、周りの Ruby 熱の高さに圧倒されました…。Ruby という技術が本当に好きな人が集まっていたので、自分もこれほどの愛を持つべきなんだろうか、と自信を無くしたほどです。

しかし、改めて振り返ってみて ネガティブな面だけでは無いな と感じています。 圧倒されて自信を無くしたからこそ、「もっと Ruby を好きになりたい」と、一種の憧れにも似た感情が湧いたことも事実です。実際 RubyKaigi 後の休暇中に Ruby に関する本を買い漁ったり、セッションを聞いて分からなかった技術についてググりまくりました(笑)。 ですので、Ruby に関して自信が無くて参加を迷っている方がいたら、勇気を出して参加して頂きたいです。最初は圧倒されるかもしれませんが、絶対に良い刺激がもらえるはずです!

world map

世界各地から Rubyist が集まっていました

セッションのレベル高すぎ!!!

最後に、これ(多分初参加の方は口を揃えて言っていると思いますが、改めて)。 流石に Ruby を長年触っていると「何について話しているか」くらいは分かるのですが、内容が殆ど理解できませんでした…。でも、それもそのはず。登壇者の多くはコミッターや gem の開発者で、その技術を作った人や達人です。むしろ、私が分かるような話がある方がおかしい、というレベル。

ただ、そんなセッションの中に私のレベルでも分かるような例え話やユーモアを交えたものもあり、聞いていて退屈なセッションは一つも無かった印象です。全ての登壇者が Ruby を愛していて、本気で取り組んでいる事が分かるものだったので、その熱量を受け取れただけでも非常に良い経験でした。

1点だけ 初参加者が事前に前提として把握しておいた方が良いと思ったのは、RubyKaigi のセッションは Ruby そのものの開発や改善の話が多いということです(当たり前ですが)。gotanda.rb などのコミュニティでは、Ruby を使ってどんな事が出来るか、Ruby のこの機能を使ってみた、Ruby のしくじり話、系の話が良く話されている印象ですが、そういった話は少なく、基本は言語自体について話されているセッションが多かったです。その前提を知らないと少し面食らう方もいるかと思うので、ここは抑えておいたほうが良いポイントかな、と思いました。

ちなみにギフティでは、前もって RubyKaigi のタイムスケジュールを眺める会(予習会?)を行っていた事もあり、事前にどういったセッションがあるかを把握していたので、思っていたものと全然違うという事態は免れました。余裕がある方は事前にタイムスケジュールを眺めて、ある程度全体の雰囲気を掴んでおくとよいかと思います。

心に残ったセッション・イベント

Writing Weird Code

「奇妙なコード」のお話。とにかく驚きの連続でした。 1発目のセッションとして相応しいキャッチーさで、このセッションを生で見られただけで来て良かったな、と思えた程でした(笑)。複雑で奇妙で面白いコードを書くことを競う TRICK で金賞を採った tompng さんのセッションで、動きのある発表はとにかく楽しかったです。

入り口に掲載されていたコード

このコードによって RubyKaigi の PV が再生されていました

Enjoy Creative Coding with Ruby

こちらの発表は Ruby を使った Creative Coding に関して話されていました。2日目最終日のLTにてたった5分の内容でしたが、私の心に深く刺さったので紹介します。

Creative Coding とはコードを使ってアート作品を書く事です(コードでお絵かきをする、という表現を使われていました)。js の Processing と Ruby を組み合わせて作成したアート作品などを紹介されていて、Writinig Weird Code とも通ずる内容でした。

私は、この LT の中にあった 「自分が楽しむためにコーディングをしている」 という言葉に心を打たれました。仕事でプログラミングをする事が多くなっていたので、「楽しむ」という感覚を忘れていたな、と。 プログラミングを何かの手段として使うのではなく、楽しむために一種の「おもちゃ」のような感覚で使うというのは私には無い感覚だったので、新しい世界を見つけた感覚でした。

楽しむ、という感覚は日々業務に追われていたり歳を重ねる毎に忘れがちだと思う(実際忘れていた)ので、思い出させてくれた @chobishiba さんには感謝を伝えたいです。

(最近は https://twitter.com/hashtag/dailycoding を眺めて色んな人の作品に触れていたりします)

Ruby Committers and the World

Rubyのコミッターによるパネルディスカッション「Ruby Committers and the World」では、Rubyの未来や課題について深く掘り下げた議論が行われました。このプログラムでは Matz をはじめとした Ruby コミッターの方々が壇上に集まり、議題に沿って喋りたい人が手を挙げて好きなように喋っていく、という形式で、実際の議論の現場を見ているような感覚で観ていました。

Literal String や rbs、ビルドツールの話など、現状の課題から今後の改善予定の機能がどのような経緯で修正まで至ったのか等、何かしらの発表として残っていないのが勿体ないくらいの貴重な話がいくつも聴けました。(去年の動画は YouTube にアップされているみたいだったので、今年の動画がアップされたら是非観てみてください)

最後のほうに Matz が他言語の async/await に苦言を呈していたのが特に印象的で、是非はともかく、生の声で開発者の思想を聴ける機会はあまりないと思うので、非常に楽しい時間でした(笑)(async/await については Ruby 自体が極力開発者が無駄なことをしない、という思想を持っていると思うので、async/await もその思想に反することなのかな、と勝手に推測したりします)。

壇上の様子

Ruby Committer 勢揃い!

得たこと

今回、初めて RubyKaigi に参加してみて、お世辞では無く本当に多くのことを学べたと思います(正確に表現すると「学び」よりも「気付き」に近いかも)。技術的な事ももちろんそうですが、「初参加」という立場としてはそれ以外で得たことの方が多かったかもしれません。細かいところではいくつもありますが、大きく分けて2つあります。

1. Ruby 愛が高まったこと

多くの Rubyist に触れたり、間近で制作者に触れる事で Ruby への親近感が一気に高まりました。最初は独特の雰囲気に圧倒されたりもしてましたが、3日目が終わる頃にはすっかり Ruby を好きになって、Ruby を書いている自分をなんだか誇らしく思える位になっていたと思います(笑)。

Ruby の未来の明るい話を聞くことが多かったこともあり、自分の使っている仕事道具が向こう数年は安泰だと感じたことも誇らしさに繋がったのかもしれません。高速化やメモリ最適化、構文解析の改善によって、Ruby はどんどん進化しているという実感も得ることができました。

2. 技術(Ruby)へのモチベーションが上がったこと

セッションの項でも触れましたが、技術を「楽しむ」という姿勢が非常に格好いいと思いました。Creative Coding のように、いつもの業務とは違う形で技術に触れてみることで世界が広がることもありそうだ、ということに気付けたことで技術へのモチベーションも高まりました。

早速、技術書を買い漁ってみたり、Processing を触ってみたりしているのですが、楽しんでやれているのは RubyKaigi に参加した影響が大きいなと感じています。(一過性のものであっても、それはそれでいいと思ってます。気付いたことが大事)

初参加の方に向けて

最後に、今回の初参加を振り返ってやって良かったことがいくつかあるので、来年以降に参加する方に向けて助言を残したいと思います。

1. 松田明さんの「初心者のための RubyKaigi 入門」を読んでおく

RubyKaigi のチーフオーガナイザーである松田明さんの初参加者に向けたスライドがかなり参考になったので、こちらを一読しておくことをお勧めします。そもそも RubyKaigi とは?目的は?という部分が分かりやすくまとまっているので、何よりも先に見ておくとよいと思います。

私はこのスライドを読んでいたので、RubyKaigi が勉強を目的にしたものでは無く、Ruby を作っている人たちに直に触れて刺激をもらう場所だということを理解していました。そのため、必要以上のプレッシャーを感じずに臨めました。恐らく、このスライドを読んでいなかったらスゴイ人の圧に負けて自信が地の底に落ちていたことでしょう(笑)(それでも自信は無くしましたが)。

2. 予習はすべし!

RubyKaigi は事前にセッションの概要が公開されます。

https://rubykaigi.org/2024/schedule/

ギフティでは事前予習会として、気になるセッションを挙げて概要を見てみる、という会を実施しました。これに参加していたお陰で、TRICK や Parser 等の存在を事前に認知でき、当日のセッションにある程度付いていける体勢が整っていたと思います。どんな形でも良いので事前に予習をしておくと、よりカンファレンスを楽しめると思います。

ちなみに、RubyKaigi 開催前にはスポンサー等の企業が事前勉強会を開いていたりします。個人で参加する際は勉強会を開くこともハードルが高いと思うので、そういった外部の勉強会に参加してみるのもよいかと思います。

3. 色んな人と話してみよう

こちらはカンファレンス中の動き方です。

RubyKaigi は参加者がとても多いため、Rubyist 同士が交流できるような施策も多くあります。代表的なものだとアフターパーティや DrinkUp です。公式のものもありますし、スポンサーが開催しているものもあります。

私はその席で Ruby のテスト談義をしたり、他社の事業について聞いてみたり、FJORD BOOT CAMP(フィヨルドブートキャンプ) で Ruby を学んでいる方と話したり、色々な交流を通じて沢山の学びを得ました。思いがけない出会いのきっかけになったこともあったので、とても楽しかったです。 本当に人がたくさんいるので少し物怖じしてしまうこともあると思うのですが、ここまで Rubyist が集まる機会は絶対に無いので、是非色々なイベントに参加して交流してみてください。

おわりに

RubyKaigi 2024への参加は、私にとってとても貴重な経験となりました!これからも Ruby を学び続け、その楽しさや素晴らしさを多くの人と共有していきたいと思います。そして、スポンサーとしても引き続きコミュニティを支援していけるよう、会社としても個人としても努力していきます。

個人的には、もっと予習しておけば良かった、もっと話に付いていきたい!という後悔があるので、来年以降参加する際には今より強い自分になって参加出来るよう邁進していくつもりです。技術に対する熱意と、コミュニティの温かさに触れたこの経験を胸に、これからも成長していきたいと思います。沢山の学びと経験をくれた RubyKaigi 2024 と、関わった全ての方々に感謝いたします。本当にありがとうございました!

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